高齢者が犯罪に手を染めるとき


http://wedge.ismedia.jp/articles/-/4372?page=1

高齢者が犯罪に手を染めるとき
『高齢初犯』
2014年10月30日(Thu)  中村宏之 (読売新聞東京本社調査研究本部 主任研究員)

高齢者の犯罪が近年増えている事実に着目し、その背景にある問題を丁寧な取材を重ねて浮き彫りにした本である。それまで善良に生きてきた人が、高齢者と呼ばれる年齢になってから初めて犯罪に手を染める。もちろん本人の責任は逃れられないが、人生の終盤にさしかかった人の犯罪が顕著に増えている背景には、高齢者と社会との関わりが以前とは大きく変質していることがあると指摘した。筆者(中村)も人生の折り返し点を過ぎ、今後自分が置かれた状況によっては、「もしかしたら、自分もやってしまうかもしれない」と身につまされた。

 本書は日本テレビを中心にネットワーク各局が制作に参加する「NNNドキュメント」の番組がもとになっている。この番組は筆者も見た。人生経験を積み、一見穏やかにみえる人が罪を犯し、その後深く後悔している姿に心が痛んだ。警察庁の資料によると、我が国の高齢者による犯罪は平成に入った頃から目立ち始め、特に平成10年以降に顕著となっている。
ストーカー、万引き、殺人…
『高齢初犯―あなたが突然、犯罪者になる日』(NNNドキュメント取材班、ポプラ社)

 本書には多くの事例が紹介されている。

・高齢者ストーカーの急増
・300円の惣菜を万引きした70歳男性
・別居中の夫に対するイライラが募って万引きを繰り返した66歳の女性
・過去の生活が忘れられずに財布を盗んで現行犯逮捕された65歳男性
・4万9000円の所持金がありながら万引きした70歳男性
・精神疾患の息子を殺めた67歳の父親
・同級生に貸したお金が戻らず、会社倒産後63歳で強盗致傷に走った男性

 などだ。

 どのケースもやるせない思いに襲われる。犯罪が悪いのは確かだが、そう断じ切きってしまうには何かひっかかる。なぜ人生経験を積み、それなりに分別もあるはずの高齢者が犯罪者になってしまうのか。

http://wedge.ismedia.jp/articles/-/4372?page=2

高齢者が犯罪に手を染めるとき
『高齢初犯』
2014年10月30日(Thu)  中村宏之 (読売新聞東京本社調査研究本部 主任研究員)

 理由は根深く、複雑だが、本書はその理由として高齢者の社会的な孤立があると指摘する。家族や近隣社会、行政との関わりから孤立する。一人で暮らし、経済的にも追い込まれる。体力的にも衰えてゆく。そうした中で犯罪に走ってしまうのだ。
犯行の引き金はないのかもしれない

 さらに本書は、高齢になることによる様々な変化にも言及する。たとえば体力の低下、経済的な環境の悪化による不安、仕事がなくなることによる人間関係の変化などだ。これは実際に高齢者になってみないとわからない部分もあるだろう。「高齢者になってみなければ高齢者の気持ちはわからない」と本書も言及している。取材者の正直な気持ちの吐露だと思う。

 本書で印象的だったのは、罪を犯した多くの高齢者が、その時のことを問われた時の反応だ。「むしゃくしゃしていた」、「もう、どうにでもなれ」と話しながら、その瞬間については「覚えていない」、「やる、やらない、を迷いながら、どうしてやる方向に決意してしまったのかわからない」といった趣旨の答えをする人が多いことだ。

 取材でも「その時はどういう思いだったのか」という点には当然、迫っている。しかし、はっきりした部分はなかなかわからない。

 本書は〈そもそも罪を犯す瞬間、犯行の引き金になるような具体的なきっかけはないのかもしれない。膨らみすぎた風船が破裂するように、不安な気持ちが限界に達したとき、直接の外的要因がなくてもそれに耐えられなくなって爆発してしまうのかもしれない〉と指摘する。たしかにそうなのかもしれない。「本人もわからない心の闇があるのか」という思いに襲われつつ、筆者もほぼ同じ印象を持った。
習慣づけるべき7つのポイント

 人は誰でも老いる。洋の東西、万人に共通し、あらがえない現実だ。ただ、サラリーマンでも自営業者でも、仕事を勤め上げ、社会で現役を退いた後、命の灯が消えるまでどう過ごせるかは人によって大きく違う。

 子や孫に囲まれて楽しく老後を暮らせる人は本当に幸せだと思う。しかし、世の中にはそういう人ばかりではない。孤独に身をやつしながら暮らす人もいるし、むしろ今はそういう人が増えているのかもしれない。経済的に困窮し、行き場所がなく、犯罪を繰り返して刑務所でずっと余生を送る人もいる。本書は、社会から孤立し、後悔するような罪を犯さないためにも、高齢者が互いに見守り、大事にされる関係をつくることが大事だと指摘する。

http://wedge.ismedia.jp/articles/-/4372?page=3

高齢者が犯罪に手を染めるとき
『高齢初犯』
2014年10月30日(Thu)  中村宏之 (読売新聞東京本社調査研究本部 主任研究員)


 そのためにはどうすればよいのか。本書の終章では〈家族、親類、友人など横のつながりを早めに築く〉など習慣づけるべき7つのポイントを挙げている。いずれも合点のゆくことばかりである。高齢者になった時、社会から孤立しないために、その前から準備を進める必要性を本書は説く。年齢を重ね、体力が落ちた自分がどんな思いで暮らしていくのかを早めに考えて、準備をすることが大事だと強調する。

 仕事に邁進している働き盛りの現役世代には、こうした発想には筆者も含めてなかなかなりにくい。しかし、冷静に考えれば非常に大事なことである。社会での肩書や所属する組織で活躍することはもちろん大切だが、自己を確立し、家族や地域と良好な関係を築き、そして何より自分に誇りをもつことは何より重要なことである。読む人の年齢を問わず、人間としてしっかり生きる力を自分で持つことの大切さを強烈に知らしめてくれる一冊だ。

生活破綻?老後破産?終活を急ぐ理由?


生活破綻?老後破産?終活を急ぐ理由?

人生のゴミの片付けなんていつでも出来ると思っていたら大変なことになる。自分の経済がちょっとした事で破綻。家族の誰かの病気怪我。子供の失敗。下手すると子供が先に旅立つこともある。



http://gendai.ismedia.jp/articles/-/40605

2014年10月07日(火) 週刊現代
「老後破産」200万人の衝撃第2部 カネはない、でもプライドはある「破産する人」「しない人」ここが分かれ目だった
65歳以上の16人に1人が直面する

「一人暮らしの男」が危ない

誰にでも襲いかかるかもしれない老後破産の恐怖。第1部では、その実態をお伝えしたが、どんな人が貧困状態に陥りやすいのか。高齢者問題に詳しい淑徳大学総合福祉学部教授・結城康博氏と、生活困窮者への支援を行っているNPO法人ほっとプラス代表理事の藤田孝典氏に聞いた。

*

藤田 私が代表理事を務めているNPOでは、生活困窮者の相談を年間300件ほど受けていますが、そのうち半数が65歳以上の高齢者で、しかも一人暮らしの男性なんです。

もともと独身で天涯孤独の方だったり、離婚してしまった方だったりと事情はさまざまですが、誰にも相談できずに貧困状態のまま我慢して暮らしてきて、「いよいよ」という状態になってはじめて我々のところへ来られる。

結城 女性よりも男性のほうが、老後破産しやすいという傾向にありますね。

藤田 女性のほうがコミュニケーション能力が高いので、比較的早めに相談に来るんです。男性の場合、「たくましく、強くなければ」という意識の強い人が多い。

まずいのは誰にも相談できず、自分だけでなんとかしようとするケースです。最悪の場合、孤独死とか餓死という事態になってしまいます。

結城 収入について見てみると、まず国民年金だけでは生活するのは困難です。

国民年金は定年のない自営業者のための年金で、本来なら65歳以上になっても働き続けながら年金を受け取るとか、高齢者は子ども世代に扶養されつつ年金を受け取るという前提で制度設計がされています。

しかし実際にはそんな悠々自適な自営業者ばかりではないし、65歳以上になって新たに就労するのはまず無理でしょう。

では子どもや親族に頼れるかというと、さまざまな事情から家族と絶縁状態にある人もいるし、子ども自体が貧しくて親の面倒を見られないという場合もあります。

藤田 そうですね。高齢者が頼れる子ども世代は、いまや雇用者の約3割が非正規雇用ですから、ワーキングプア状態の人が多い。夫婦と職探し中の息子の3人暮らしで、収入は夫婦の年金10万円だけ、なんていう家庭もあるくらいです。

そのため子どもに世話になるどころか、定年後も子どもの学生時代の奨学金の返済に追われていたり、息子の自動車ローンを払っていたりして貧困状態になっている高齢者も多いんです。子ども世代の貧困問題を親世代が被ってしまっているんですね。自分自身は大丈夫だと思っていても、子どもが自立していない、というのも破産の原因になるんです。


結城 国民年金や無年金の人だけではなく、サラリーマンで厚生年金をもらえる人でも困窮する人は少なくないはずです。

藤田 以前、相談にのったおじいちゃんは、65歳までの40年間、町工場で働き続けながらコツコツ貯金もしていました。引退後は、「貯金もあるし、年金も入ってくるから大丈夫だろう」と思っていたけど、75歳くらいから貯金が目に見えて減り、そのうちアパートの家賃が払えなくなって、78歳になったときに家賃滞納を理由にアパートを追われてしまったんです。

結城 決して贅沢をしていたわけではなくても、気づいたら貯金が目減りしていたということはありえます。定年後は、収入は確実に下がるわけですから、現役時代と変わらない生活習慣を続け、生活のレベルを下げられない人—これも破産に陥る一因でしょう。

藤田 うまくやりくりしていけると思っていても、実際に年金が支給されると、「これだけ低いとは」と驚く人が少なくないんですね。

このように中小企業のサラリーマンはもともと給料が低いので、現役時代の報酬に比例する年金支給額も少ないのですが、かつて高額の給与をもらっていた銀行員のような人でも生活が破綻してしまう場合もあります。

ある元銀行員は、定年後に事業を始めるためのタネ銭として、年金担保融資で数百万円もの多額のおカネを借りていたんです。

ところが、事業を始める準備をした形跡がなかった。借りたおカネはどこに消えたのかと思って調べてみたら、食品やお酒のレシートがわんさか出てきたんですね。どうやら周囲の人に配っていたようで、結局破産してしまった。

おかしいと思って家族が病院に連れて行って診察してもらったら、若年性の認知症だったということが発覚しました。本人も周囲も気付かないうちに認知症の症状が進んで、おカネの管理ができずに貧困化してしまう人も少なくないんです。

それから、悪徳商法やオレオレ詐欺の被害にあったことをきっかけに、貧困状態に陥ってしまう人もいます。そういう意味では、誰もが老後破産に陥る危険性があるわけです。

プライドが邪魔をする

結城 社会の高齢化は急ピッチで進みますから、このままでは社会秩序が崩壊しかねません。実際、貧困から来る高齢者の犯罪も増えていますからね。

藤田 そうですね。高齢者の犯罪の増加は肌身で感じています。多いのは万引きですが、やはり貧困が原因になっているものが圧倒的です。万引きする商品も弁当3つだったりしますから、明らかに生きるために盗んでいる。

もう一つ増えているのが無銭飲食です。牛丼店やカラオケボックスで大量に食べ、支払いの段になったら「警察を呼んでくれ」と。


万引きは窃盗罪、無銭飲食は詐欺罪になりますが、初犯だと逮捕されても罰金刑で釈放されることがほとんどです。でも、貧困状態のままだと同じことの繰り返しになる。そのうち裁判所も「もう社会の中で生活できない」と判断しますから、刑務所に入ることになる。しかし、半年、1年と刑務所生活が続くと、出所した時に帰れるアパートもなくなってしまう。そこから生活を再建するために必要なコストが一層増えることになるんです。

だから貧困問題というのは早期発見、早期介入が原則なんですが、難しいのは外見からは困窮しているのか否かを見分けることができないことです。最近は衣料品も安いので、貧困層の人でも見た目はこざっぱりしている人が多い。背広を着ていながら、「実はネットカフェで寝泊まりしています」という高齢者もいますからね。

結城 だけど、本当は高齢者の貧困問題というのは存在しないはずなんです。なぜなら、事実上就労が困難である65歳以上で困窮状態にある人なら、生活保護を受けられるんですから。

藤田 本当にその通りだと思いますけど、問題は二つあります。一つは、彼らが持っているプライド。とくに高齢の方に多いのは、他人の世話になってはいけないという道徳観が根強くある。

「生活保護受給者となるのは恥だ、お上の世話にはなりたくない」と思う人も多いですし、身近な人にも頼れない。

だけど、そのままでは生活が破綻するし、中には栄養状態が悪化して健康を損なう人もいる。

結城 私は若者の貧困問題は、当事者の甘えも半分はあると思っているんですが、お年寄りに限っては、生活保護の受給は権利であるという認識がもう少し必要なんだと思います。そうしないと、憲法第25条で保障されている「健康で文化的な最低限度の生活」が保てません。

藤田 老後破産のもう一つの問題は、窓口となる福祉事務所の対応です。

結城 わざと生活保護を受けさせなかったり、いい加減な職員が門前払いをしているのが実態ですからね。

藤田 ええ、持ち家のような資産を持っている人の場合、扱いが非常に厳しくなるんですね。

相談に来られる方というのは、古くてボロボロになった家に住んでいる人が多いんですが、自宅を売却しようと思ってもおそらく買い手はつかないような物件です。それでも役所では「生活保護は資産を売ってからです」と言うところがまだまだ多い。

結城 本来、ローンがなくて資産価値が一定基準以下で、生活に利用している持ち家であれば、売却する必要はありません。


藤田 そうなんです。いま住んでいるところに住み続けながら生活保護を受けましょうという方向に国の政策は動いているんですが、福祉事務所の現場では「資産を売却してから」という説明が、まだまだまかり通っているんです。世の中にも「家や車を持っていると生活保護は受けられない」という誤った情報が広まっているので、事前に諦めてしまうお年寄りも多いんですよね。

年金額15万円の落とし穴

結城 制度上の問題もありますよね。

藤田 はい。生活保護を受けるためには、親族に扶養能力があるかどうかを調査してからということになっています。そのための「扶養照会」は三親等以内の親族に対してなされます。つまり厳格に運用されれば、兄弟姉妹やおじおば・甥姪はもちろん、配偶者側の兄弟姉妹やおじおば、子供や孫、ひ孫らの配偶者にまで知られることになる。

生活保護を申請しようと福祉事務所に行ったら、まずそれを説明されるため、「そんな遠い親戚にまで連絡されるなら、生活保護なんて受けたくない」と高齢者は躊躇してしまう。他人には迷惑をかけたくないと思いますからね。

結城 貧困状態にある高齢者というのは、いろんな事情で家族や親族と疎遠になっている人が多いわけです。極言すれば高齢者の貧困問題は、生活保護を受けてもらうことで解決できます。

ですがこれから問題になってくるのは、中小企業に勤めていたサラリーマンなど、定年後の収入も生活保護水準以上にある人ではないでしょうか。

藤田 そうなんです。サラリーマン時代にあまり給料が多くなかった人は、厚生年金の額が15万円以下という人が多いんですが、この程度の収入があると、生活保護の給付対象にならないケースもあります。

受け取る年金は報酬に比例し、現役世代の収入の5~6割に設定されています。たとえばモデルケースとして、月収30万円の人は引退後、65歳以降に月15万円以下で暮らしていかないといけない。このラインの人の生活水準は、おそらく生活保護レベルよりも低くなる可能性が大なのです。

なぜなら、生活保護の人は税金や健康保険・介護保険の保険料も免除になる。医療費も実質的に全額免除です。比べてみると、生活保護レベルの少し上の層が最も生活が厳しいというのが現実なんですね。

結城 サラリーマンとして定年まで勤めたし、年金ももらえるから大丈夫だと思っている人ほど、リスクが高まる可能性があるということですよね。こういう層にまで生活保護のセーフティネットを広げられればいいけれど、財源の問題もあるので、実際問題難しいでしょう。

たとえば、生活保護を受けていなくて収入が一定以下の人に対しては、健康保険料・介護保険料を免除し、医療費も無料にすることも一つの方法かもしれません。


藤田 高齢者が貧困に陥る最大の原因は、病気と介護なんです。無料低額診療施設もあるんですが、この存在はあまり知られていません。そういう中で、結城さんがおっしゃるように医療や介護費の負担が減れば、高齢者は楽になりますね。

結城 老人の貧困は表からは見えにくい。でも、隠れている貧困高齢者をどうにかして見つけ出し、福祉サービスに結び付けていくことが大切です。そうしないと本当に社会秩序が崩壊してしまいます。

藤田 高齢者の貧困問題を解消するためには、若年層の雇用問題もどうにかしないといけないですよね。非正規雇用ではなく、若者が安定的な生活を送れるような雇用環境を整えていかないと、彼らが頼っている親世代の貧困が解決しないし、近い将来、大量の貧困世代が生まれることになりますから。

結城 それと希薄化した家族関係に対する施策ですね。行政に支援を求めているような高齢者は、家族関係が崩壊している人がほとんどなんですから。家族関係を深めていくような何らかの対策が必要です。

現状では、生活保護にせよその手前のボーダーラインのレベルにせよ、就労できない高齢者の貧困は放置しておけない問題です。破産状態に陥らないための知識を個人が持っておくと同時に、国の制度も見直していかないと、老後破産の問題はさらに深刻になってしまうでしょう。
藤田孝典(ふじた・たかのり)/生活困窮者の支援活動を行うNPO法人ほっとプラス代表理事。反貧困ネットワーク埼玉代表なども務める。著書に『ひとりも殺させない』(堀之内出版)など
結城康博(ゆうき・やすひろ)/淑徳大学総合福祉学部教授。社会福祉士、ケアマネジャー、介護福祉士として地方自治体に勤務した後に現職。近著に『孤独死のリアル』(講談社現代新書)など

http://gendai.ismedia.jp/articles/-/40605

30

365

人気の投稿